あれは一体なんだろうと言う日々がある。
何度思い返してもわからない
「例えば」
「まさか」
「仮に」
「もしも」
「ひよつとしたら」
すべが交差する人生の五叉路
そっとそれが出る人生の隠し味
妄想!やれたかも委員会!
ようこそいらっしゃいました。
「先にシャワー浴びてくるね」
きっかけは同級生
それが僕がまだ大学出て間もない頃、学生の頃はあまり話をしたことがない、そんなに仲良くもない同級生から電話がかかってきました。
「実はすごい話があるんだよ、人生がかかってるビックチャンスなんだ。」
「オカポンもやったらいいよ、絶対!儲かるから!」
「時間ないから、すぐに会いたいんだけど時間あるかな?」
「え?何?何なの?」
今にして思えば、突っ込みどころ満載な電話がかかってきました。
当時は家の電話しかなく、かかってきた電話に出るまで相手が誰なのかもわかりませんでした。
「ア◯ウェイって知ってる?!実は、ネットワークビジネスって言うんだけど。」
「すぐにすごく儲かるし、そして簡単に成功するビジネスがあるんだよ!話を聞いてほしいんだけど」
それから、かれこれ一時間近く話したでしょうか。
その日は5時からバイト。
すぐに出ないと間に合わない時間だったので、もういい加減に電話を切りたかった僕は、そいつの話に半分戸惑いながらも、むげに断ることもできず会う約束をしました。
我ながら、この内容で、よくひょいひょいと会いに行ったもんだ!と思います。
今でも。
当時立川に住んでいた僕は、待ち合わせの神田まで、(彼の実家のすごい近く)まで来て、こんなことならあの時に断っとけばよかったとすでに思ってました。
神田の駅の改札口で待つこと10分、やっと同級生のK林君が現れました。
「いや、ごめんごめん。お待たせしちゃったwww」
半笑いのK林君にがっかりしながらも付いて行き、近くの喫茶店に入りました。
やばい、だまされた!
なんと!そこにはもう1人女性がいて、すでに向かい合わせの席に座っていました。
「え、えぇ?!お前だけじゃないの?聞いてないよ!」
とここにきて、ようやくヤバイと思った僕は、なんとかそこから帰ろうとしました。
「え?言ってなかったの?それじゃびっくりしちゃうわよ。」
とK林君にその女性もびっくりしていました。
そしてこちらに申し訳なさそうに、
「びっくりなさったでしょ?!私帰った方がいいかしら。ごめんなさい。」
と落ち着いた穏やかな声であやまってきました。
「いえいえ、そんな、大丈夫ですよ」
と思わず言ってしまった僕は、大きな瞳を申し訳なさそうに細めて、艶やかで肉厚のくちびるからあふれてくる甘い少しアニメ声に、いつの間にか聞き入っていました。
喫茶店のくみさん
「くみさん」と言うその女性は、このネットワークビジネスの先輩らしく、K林のことも面倒を見ていたようで、
「すごい話がある!」
と言っていたk林はなんにも説明もできず、ほぼ全部、くみさんが話をしてくれました。
くみさんはとても丁寧に、ゆっくり、僕の目を見ながら話をしていました。
ア◯ウェイのビジネスモデルの話をしていたんだと思います。たぶん。
でも、正直なところその時の話の内容は全く覚えていません。
話す時の甘くて、どこか可愛らしい声。
まっすぐ僕を見つめながら、少しでも僕がうなづくと見せる嬉しそうな笑顔。
くろ茶色の吸い込まれそうな瞳の奥がキラキラしていたこと。
何かの資料を指差すうすいピンクのマニキュア、髪をかきあげる時には、ほんのりいい匂いがしました。
気がついたら約二時間、僕はずっとうなずいていたようで、
「とても真剣に聞いてくれてありがとう!」
と、くみさんに言われました。
えーと、話の内容、全然頭に入ってません。
それは、一生懸命話してくれたくみさんに、今でも申し訳なく思います。
もうすんなり。
全ての話が終わり、帰る頃にはいつのまにか僕はやることになっていました。
となりにずっといたK林も、とても興奮気味で、
「やろうよ、すごいことになるよ、感性がいいんだよ」
確かそんなようなことを言っていましたが、僕はくみさんの嬉しそうな笑顔を見つめていました。
「入会に8,000円かかるんだけど、今日は持ってらっしゃいましたか?」
と言われて、急にびっくりしました。
K林もあわてていて、言ってなかったと僕に伝えてきました。
その時の所持金は2千円くらいで、帰りの電車代くらいしか持っていません。
「ごめんね。私からもしっかり伝えておけばよかったわね。」
「でも、今日は会えて嬉しかったです。こんど私の家でお料理会をやるの。もしその時に時間があったら、来ない?」
との言葉に、「はい!ぜひ伺います!」ひとつ返信で返していました。
喫茶店はくみさんが飲み物代を出してくれてその日は解散となりました。
「電話番号教えて」
僕はくみさんの番号と交換しました。
くみさんの声と大きな瞳が頭をぐるぐる回って、ふわふわしながら家に帰りました。
くみさんのお誘い
くみさんから電話があったのは、3、4日後のこと。
「お料理を作るから、来ない?」とのお誘いがありました。
その日はバイトで夕方になってしまうことを告げると
「じゃあ、晩ごはん、ボリュームメニューにするから、いっぱい食べてって!」
急な誘いにドギマギしながらも、夕食を食べに行くことに。
バイトが終わって、埼玉県越谷市のくみさんの家に着いたのは確か7時過でした。
お邪魔すると子供のにぎやかな声が聞こえてきました。
「わぁ、お子さんいらっしゃるんですねー」
「そうなの。うるさいでしょ。」
「いえいえ、そんな!」
などと会話をしながら、くみさんのコロコロころがる声と、飾り気のない清潔なエプロン姿を見てました。
あったかいご飯と、
「もう少しでできるから」
キッチンからはいい匂いがしてきて、急にお腹が空いてきました。
木の器に入ったサラダ、ホックホクの肉じゃがと里芋の煮物、鳥の炊き込みご飯、ブリの照り焼き、大根のみそ汁がテーブルに並びました。
「うわー!すごいですね!」
「ビールでいいかしら。いつも作ってるものだけど。いっぱい食べてね」
一つ一つがどれも美味しくて、ハシが止まりません。
「ご飯お代わりしてね。」
くみさんは何度もキッチンを往復してくれて、ご飯もおかずも、ビールもいっぱい持ってきてくれました。
「さすが、若いからよく食べるのね!嬉しいわ!」
一緒に食べながら、くみさんといろんな話をしました。
旦那さんのこと、子供のこと、料理が好きなこと、自分の学生時代のこと、主婦だけだと時間を持て余してこの仕事を始めたこと、料理好きが役に立っていることなど。
僕も、今の仕事のこと、日々のバイトのこと、将来のこと、やりたいことなど、いろんな話をしました。
気がつけばもう、11時近くになっていました。
「くみさん、もう帰らないと、電車が」
くみさんのお誘い
「ごめんね、いっぱい話しちゃったから。時間のこと気づかなかった」
「もし大丈夫なら、泊まっていったら?」
「え?!」
「今日、旦那が出張で帰ってこないのよ」
「えー?!」
「いいんですか。。。」
「うん。子供寝かしつけるから、先にシャワー浴びてくるね」
「。。。」
子供と一緒にお風呂を出てきたくみさんは、薄手のパジャマに着替え、まだ乾いていない髪をタオルでまとめていました。
「タオルとバスタオルはこれ使ってね」
渡されたタオルとともに、湯上りのシャンプーの湯気が僕の顔の周りに漂ってきました。
すっぴんのくみさんは微笑み、子供の頭をタオルで乾かしながら奥の部屋へ入って行きました。
深夜の寝息
僕が風呂から上がると、リビングの奥に布団が敷いてありました。
「ごめんなさいね、こんな布団しかなくて。」
「いえいえ、充分です!」
「何か、飲む?お水?ビールもあるわよ」
冷蔵庫から缶ビールを二本出して、乾杯。
とっくに12時を回りました。
子供はすっかり寝ています。
「じゃあ、もう寝よっか」
一瞬、ドキッ、としたのは僕だけだったのか。
二人でキッチンに片付けに行くと
「ふとん硬いから、寝られなかったら、いってね。」
歯を磨いてふとんに着くと、
「じゃあ、電気消すね」
部屋は小さい明かりが灯って
「おやすみなさい」
と奥の部屋に入っていきました。
奥の部屋といっても、リビングにくっついている部屋です。
部屋の引き戸はなぜか開いていて、子供の寝息が聞こえてきます。
薄暗い部屋の中にはくみさんのふとんの音が聞こえてきます。
「ふとんが硬かったら、いってね」
この言葉がずっと頭の中をぐるぐるぐるぐる回ります。
「(硬かったら、なにを言えば、いいんすか?!)」
ふとんは、固くありませんでした。
が、このままでいいのか。
奥の部屋からはすーすーと寝息が聞こえてきます。
僕はトイレに行こうとして、奥の部屋の前を通りました。
タオルケット一枚をかけただけのくみさんと子供が寝ています。
僕は、しばらく立ち止まっていました。
僕は、しばらく立ち止まっていました。
すーすー寝息を立てて寝ているくみさんの隣に、そのまま腰を下ろして寝顔をずっと見てました。
体のラインが見える薄いタオルケットをゆっくりめくって、くみさんの背中にぴったりとくっついてショートカットから少し伸びた髪をゆっくり手で撫で始めました。
「起こしちゃった?」
「うんうん、寝てなかったよ」
「布団が固いから、こっちに来ちゃった」
「ごめん、硬かった?!」
「ウソ!でもこっちの布団のほうが、いいな」
「ほんと?!ふふふ」
などと言う事は一切なく、僕はそのままトイレに行きました。
トイレから帰ってくるとそのまま自分の布団に入りました。
シーツの音や、静かな寝息が聞こえてきました。
しばらく、気になって、気になって、眠れませんでした。
が、いつの間にか眠ってしまいました。
朝を迎えると
あくる朝、食器の音で目が冷めました。
「あ、起こしちゃったわね、ごめんなさい」
時計を見ると、8時前でした。
「朝ごはん食べてく?」
「はい」
すでにサラダとハムエッグがテーブルの上に用意されていて、キッチンの方からいい匂いがいしてました。
「ありがとうございます」
「いいのよ、ついでだし。あ、コーヒーでもいいかしら」
「ありがとうございます」
食卓につく頃には子供も起きてきました。
「おはよう」
「うーおはよ」
昨日の夜、この子のとなりでくみさんと一緒に寝ることを考えていたと思うと、急にドキドキしてきて、くみさんにも、その子にも、ぜんぜん目を合わせられませんでした。
急いで朝食を食べ終わると、昨日のお礼を言って、くみさんの家を出ることを伝えました。
「忙しいのに昨日は泊めちゃったりしてごめんなさい」
「いいえ、こちらの方こそ!ありがとうございました」
「また遊びに来てね。」
「ありがとうございました」
一礼だけすると僕は駅に足早に向かいました。
頭の中はわけが分からなくて早足で歩くことしかできませんでした。
目にはまだくみさんの面影が浮かんでいて、自分はなにをしてしまったのか、なにをすればよかったのか、なんでいま駅に向かって歩いているのか、頭の中がぐるぐるぐるぐるまわていました。
くみさんとその後
その後、くみさんから連絡が来ることはなく、同級生のk林からもくみさんの話もありませんでした。
自分もバイトのシフトが立て込んで忙しくて、時間はあっという間に過ぎていきました。
でも心の奥の方でクミさんのことが気になっていました。
たまたまk林から連絡があり、会うことになりました。
やはり、あいかわらず的はずれなビジネスの話。
しばらく聞いていましたが、くみさんのことがどうしても気になって聞いてみました。
「だいぶ前にくみさん、料理をごちそうしてくれるって言ってたけど、なにか聞いてる?」
「知らなかったの?くみさん、引っ越したよ。」
「えぇ?!知らなかったよっ!」
「旦那の転勤で大分に引っ越したんだよ。聞いてなかったの?」
「いつ?!」
「もう3ヶ月前になるかな」
それは僕がくみさんの家に行ったひと月後でした。
一緒に食事をしていたときには、もう転勤のことは決まっていたのか。
それとも急に転勤の話があったのか。
それにしても、ひとこと言ってくれてもいいのに。
いや、ただ同じビジネスをしているだけ、一度遊びに行ったことのある、赤の他人。
連絡なんかする必要もありません。
くみさんとは、結局それっきり。その後会うことはありませんでした。
あの夜
あの夜。
なんで僕を誘ってくれたのか。
旦那が帰ってこない夜に、なんで泊めてくれたのか。
一緒にお酒を飲んで、いろんな話をして、すごい近くに寝ていて。
永遠の、還り来ぬ、淡い記憶です。
果たしてこの夜は、やれたのか?
それとも。
今となっては刻のはざまの一瞬のきらめき、遙かなる時の流れの中にただよう木の葉のように儚くおぼろげです。
決して結論が出ることのない、小さな結び目。
そんな人生の狭間のこのページでまたあなたとお逢いしましょいう!
妄想!やれたかも委員会!
次回もお楽しみに!
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